
1秒は、どうやって決めているの?
時計の「1秒」は、何をお手本にしているのかな。とても小さな原子と、波を数える仕組みから、世界で同じ長さの1秒を作る工夫を見てみよう。

まず、ひとことで
1秒は、セシウム133原子の決まった状態の変化に対応する電磁波を基準に決めているよ。原子時計は、原子の反応を調べて波の繰り返す速さを合わせ、その波を数える。原子の個数や、原子が回る回数を数える時計ではないんだ。
時計は、繰り返しを数えている
「あと10秒待って」と言われたら、時計の針や画面を見るね。でも、時計の1秒がいつも違う長さだったら困ってしまう。時計を作るときは、できるだけそろった繰り返しと、それを数える仕組みが必要なんだ。振り子時計なら振り子の動き、水晶を使う時計なら水晶の振動が役立つ。見える針や数字の後ろに、繰り返しを刻む仕事があるんだよ。
ただし、繰り返していれば何でもよいわけではない。手拍子を同じ速さで続けようとしても、少しずつ間隔が変わることがあるね。時計でも、基になる繰り返しの速さがずれると、数えた回数から作る時間の長さがずれる。そこで、違う場所でも同じものをお手本にできないか、と考える。原子時計は、とても小さな物質の部品である原子の性質を利用するんだ。
波の一回と、数える回数を分けよう
波を描いた線で、山から次の山までを一回の繰り返しとして数えてみよう。同じ場所で、1秒に何回繰り返すかを周波数というよ。単位はヘルツで、1ヘルツなら1秒に一回だね。速さという言葉を使うときも、ここで考えるのは波の山が空間を進む速さではなく、ある場所で波が繰り返す速さなんだ。二つを混ぜないことが大切だよ。
最初の図は、四回の繰り返しを「模型の1区切り」と決めた架空の例だよ。実際の原子時計の波を、その速さで描いたものではない。仮に一回にかかる時間が長くなったら、同じ四回を数えても、区切りまでの時間は長くなるね。数える回数を決めるだけでは足りない。数える相手の繰り返し方もそろえる必要がある、と図から読み取れるんだ。
波を数える考え方を示す仮の模型。横軸は共通の時間尺度で、下は一回にかかる時間を二倍にしているよ。四回を1秒とした図ではなく、原子時計の実際の周波数は表していないよ。
出典資料に基づきEggplanetが作成した模式図原子には、反応する波の目印がある
原子は、どんな波からでも同じようにエネルギーを受け取るわけではない。特定の周波数の電磁波とやり取りすると、内部のエネルギーの状態が変わることがあるよ。電磁波は、光や電波を含む波の仲間なんだ。状態が変わった原子を調べると、当てている波の周波数が、目当ての値に近いかどうかを確かめる手がかりになる。
ここでいう状態の変化は、小さな球が時計の中で一周することではないよ。原子を太陽系のような絵で表すことがあっても、電子が惑星のように回る回数を読み取っているわけではないんだ。「原子の振動を数える」と短く言われたときも、何を実際に測っているのか、一歩詳しく見てみよう。この記事では、原子の反応で合わせた電磁波を数える、と考えていくよ。
セシウム133をお手本にした1秒
国際的な単位の決まりでは、セシウム133という種類の原子を使うよ。その原子の、決められた二つのエネルギー状態の間の変化に対応する電磁波が基準なんだ。外からの影響を受けない条件での、その周波数を9,192,631,770ヘルツと定めている。つまり、その波の9,192,631,770回の繰り返しにかかる時間が1秒に当たるよ。
大きな数字だけを暗記するより、何を決めた数字かをつかもう。これは原子の個数でも、時計に入れる部品の数でもない。基準にした電磁波を何回数えるか、という数字だよ。セシウムを使う場合、この波はマイクロ波という電磁波の範囲にある。目で見える光とは違うけれど、電磁波の仲間なんだ。四回で区切ったさっきの模型とは、繰り返しの回数も速さも違うよ。
原子の反応を見て、波を合わせ直す
では、ちょうどよい周波数の波をどうやって作るのかな。原子時計には、波を作る装置と、原子の反応を調べる装置があるよ。セシウムの原子ビームを使う時計では、原子にマイクロ波を当てたあと、エネルギー状態が変わった原子を検出する。その結果を使い、波の周波数を原子の基準へ近づけるように調節するんだ。
自分の出した結果を見て、もとの働きを直すことをフィードバックというよ。二つ目の図は、波を作る、原子の反応を測る、結果を使って合わせ直す、という関係を示している。原子の通り道や、装置内で波を当てる詳しい手順を描いた設計図ではないよ。合わせた波を数える仕事もある。反応を調べる回数と、秒を作るために波を数える回数は、同じものではないんだ。
セシウムの原子時計の主な働きを分けた模式図。矢印は信号や調節の関係を示し、原子の通り道や、波を当てる回数などの実際の装置構造は省いているよ。
出典資料に基づきEggplanetが作成した模式図決まりが正確でも、測る装置には工夫がいる
1秒の決まりがあれば、どんな原子時計も絶対にずれないのかな。そうではないよ。原子を用意し、波を当て、その反応を読み取るのは現実の装置だね。周囲からの影響や測定の限界を調べ、できるだけ基準の条件に近づける工夫が必要なんだ。単位の定義と、それを実際の装置で作り出すことは、つながっているけれど別の仕事なんだよ。
また、原子時計という名前でも、原子の種類や仕組みがすべて同じではない。セシウムのマイクロ波を使う時計のほかに、目で見える光に近い高い周波数を使う光時計の研究も進んでいる。ただし、新しい時計ができたことと、国際的な1秒の定義が変わることは同じではない。この記事の確認時点の定義は、BIPMの資料にあるセシウム133によるものだよ。
「どれだけたったか」と「何時か」
1秒を同じ長さで作ることは、二つの出来事の間隔を測る助けになる。でも、時計の画面を何時何分から始めるかは、それだけでは決まらないね。全く同じ速さで進む時計でも、一方を別の時刻から動かし始めれば、表示は違うままだよ。時計の進む速さをそろえることと、表示する時刻を合わせることを分けると、時間の仕組みを整理できるんだ。
たとえば、二人が同じ間隔で手拍子をしていても、始める瞬間が違えば、手を打つ瞬間は重ならないことがある。同じテンポと、同じ始まりは別の条件なんだね。ただし、人の手拍子は原子時計のように安定しているわけではない。これは二つの仕事の違いを考えるたとえだよ。小さな原子の働きから時計を考えると、見慣れた数字にも、いくつもの約束が隠れていると分かるね。
どっとと考えよう:四回なら、いつも同じ時間?
紙に山が四つ続く波を描き、隣の紙には同じ形を横へ二倍に伸ばして描いてみよう。両方とも四回分だけれど、横方向を時間だと考えたら、同じ長さの時間になるかな。ここでは架空の波を比べるだけで、実際の1秒を測る実験ではないよ。回数と、一回にかかる時間の両方が分からないと、全体の時間を決められないことを確かめよう。
次に「波を作る」「原子の反応を調べる」「合わせ直す」「波を数える」の四枚のカードを作ってみよう。矢印でつなぐなら、どの矢印がもとの装置へ戻るかな。数えるだけの時計と、基準に合わせ続ける時計の違いを説明できたら、今日の発見だよ。原子を自分で扱わなくても、紙の図から、測る仕事と約束を決める仕事のつながりを考えられるんだ。

ことばのメモ
- 周波数
- ある場所で、波などが1秒に何回繰り返すかを表す量。単位はヘルツだよ。
- 電磁波
- 光や電波を含む波の仲間。セシウムの原子時計ではマイクロ波が使われるよ。
- セシウム133
- 1秒の定義に使う原子の種類。同じセシウムでも、原子の種類を指定することが大切なんだ。
- フィードバック
- 測った結果を、もとの働きを調節するために戻して使うこと。
- 原子時計
- 原子の決まった状態の変化に対応する周波数を、時間を測る基準として使う時計。
もとになった資料・もっと知りたい人へ
下記の資料をもとに、説明と考える問題を独自に構成しています。外部資料には英語のページもあります。どっとの画像は案内用のイラストで、観測写真や科学的な図ではありません。
- NIST:How Do Atomic Clocks Work?(繰り返し・原子の反応・計数)
- BIPM:SI base unit second(1秒の現行定義)
- NIST:How Do You Measure a Second?(マイクロ波と時間の間隔)
- NIST:Beams of Atoms(原子の検出と周波数の調節)
- NIST:Optical Clocks(光時計と測定装置の工夫)
分かりやすくするために、説明を短くしたり、たとえ話を使ったりしています。まちがいを見つけたらお問い合わせへお寄せください。制作方法は編集方針、いっしょに読むときのヒントは保護者・先生へで紹介しています。