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科学気球は、どうして重い観測装置を運べるの?:内容をイメージした挿絵
科学の原理

科学気球は、どうして重い観測装置を運べるの?

空高く浮かぶ白い袋の下に、重い観測装置。ヘリウムは何をしているのかな? 周りの空気が押す力と、袋・気体・荷物の重さから、科学気球が飛ぶ仕組みを考えよう。

まず、ひとことで

科学気球は、周りの空気が押す浮力を利用するよ。押しのけた空気の重さより、袋・中の気体・装置を合わせた重さが小さければ、上向きに動き始められるんだ。ヘリウムにも重さがあり、重力が消えるわけではないよ。

観測装置を空へ運ぶ、大きな袋

空高く浮かぶ白い袋の下に、四角い観測装置がつり下がっている。科学気球は、空の上で星を調べたり、大気を測ったり、観測機器を試したりするための気球だよ。遊びの風船と比べてずっと大きく、重い装置を運ぶものもある。ロケットのように火を噴き続けないのに、どうして空へ上がれるのかな。答えを知るには、袋だけでなく、周りの空気にも目を向ける必要があるんだ。

今回は、NASAなどで使われる、ヘリウムを入れた科学気球を中心に考えるよ。熱気球のように、中の空気を温めて浮くものとは、気体を軽くする方法が違う。でも、外側の空気から上向きの力を受けるという基本は共通なんだ。袋、気体、つり下げる装置を一つのまとまりとして見ると、飛べるかどうかを比べる考え方が見えてくるよ。

押し上げているのは、周りの空気

空気は見えにくいけれど、重さがあり、物の表面を押している。この押す強さを圧力と呼ぶよ。静かな大気では、低い位置ほど上に重なる空気が多く、圧力が大きい。気球の表面にも、いろいろな向きから力がかかるんだ。表面全体の力を合わせると、上向きの力が残る。この力が浮力だよ。ヘリウムが勝手に上へ引っ張る、特別な糸を持っているわけではないんだ。

浮力の大きさは、気球などが押しのけた空気の重さに等しい。これはアルキメデスの原理で、水の中だけでなく、空気の中でも使えるよ。「押しのけた空気」とは、そこに気球がなければ同じ場所を満たす空気のことだね。最初の図では、周りの空気から受ける浮力と、気球全体にかかる重力を比べた。風や、動くときの空気抵抗は省いた、考え方の図なんだ。

気球が受ける上向きの浮力と、袋・ヘリウム・装置を合わせた全体の重さによる下向きの重力を比べる図。
浮力と、全体の重さを比べよう

静かな空気の中で、動き始めを考える模式図。浮力は押しのけた空気の重さに等しいよ。矢印の長さは実測値ではなく、風・空気抵抗・ひもの張力などは省略している。

出典資料に基づきEggplanetが作成した模式図

ヘリウムを入れるだけで、必ず浮く?

同じ温度と圧力で、同じ体積を比べると、ヘリウムは空気より質量が小さい。一定の体積あたりの質量を密度というよ。気球の袋にヘリウムを入れると、大きな場所を占めても、その中の気体の質量は、代わりにそこへ入る空気より小さくできるんだ。ただし、ヘリウムにも質量はある。重力が働かなくなる気体や、重さがマイナスの気体だと思わないようにしよう。

さらに、袋の材料、ひも、通信機器、電池、観測装置にも重さがあるよ。それらと中のヘリウムを足した全体の重さが、浮力より小さければ、上向きに動き始められる。ヘリウムが空気より軽くても、装置をたくさん付ければ浮かない場合があるんだ。上向きの力だけを見るのではなく、持ち上げる必要のある全てを数えることが大事なんだね。

大きくすれば、何でも運べるわけではない

周りの空気の状態が同じなら、押しのける体積が大きいほど浮力は大きくなる。そのため、観測装置を運ぶ科学気球には、とても大きな袋が使われるんだ。一方、袋を大きくすると、中の気体の量や袋の材料も増える。必要な強さ、飛ぶ高さ、運ぶ装置の重さを一緒に考えなければならない。大きさだけを見れば、運べる量が全部決まるわけではないよ。

紙の上の仮の例として、浮力が120ニュートン、全体にかかる重力が90ニュートンだとするね。ニュートンは力の単位だよ。このとき、空気抵抗などを除けば、差の30ニュートンが上向きに残る。装置を増やして全体の重力が130ニュートンになれば、同じ浮力では支えられない。この数字は実際の気球の測定値ではなく、二つの力を比較するための例なんだ。

打ち上げるとき、袋はなぜしわしわ?

大きな科学気球は、地上で袋全体をぱんぱんにしてから飛ばすとは限らない。上の部分だけに気体が入り、その下の袋が余って見えることがあるよ。NASAの科学気球では、上昇すると周りの気圧が下がり、中のヘリウムが膨らむことを見込んで入れる量を決める。二つ目の図は、この打ち上げ時と上空での姿を比べたものだよ。途中で誰かが上から気体を足すという意味ではないんだ。

気体が膨らむとは、同じ量の気体が、より大きな体積を占めること。粒そのものが一個ずつ大きくなるわけではないよ。実際には気温や日差しも体積に関わる。また、上空では周りの空気の密度も小さくなる。体積が増えたから浮力も必ずどんどん増える、と考えるのは早計なんだ。押しのけた体積と、その場所の空気の密度の両方を使って、支えられる重さを考える必要があるよ。

地上では上部だけに気体が入って下側の袋が余る科学気球と、気圧が低い上空で気体が大きく膨らんだ姿を比べる。
余った袋が、上空で膨らむ

膨らむ余裕のある科学気球の模式図。大きさや高度の比率は実物どおりではないよ。気体を追加している図ではなく、同じ量でも体積が変わることを示す。実際には温度や気体の流出も関わり、袋の種類によって振る舞いは違う。

出典資料に基づきEggplanetが作成した模式図

高い空でも、空気は必要なんだ

科学気球は、成層圏と呼ばれる高い大気の層などで観測をする。そこでは地上より空気が薄いけれど、全くないわけではないよ。人工衛星のように地球のまわりを軌道運動する乗り物でもない。浮力を受けるための空気が必要だから、軽い気体を入れさえすれば、そのまま宇宙のどこまでも上がれるわけではないんだ。高いところでも、気球と装置には重力が働いているよ。

上昇中は空気抵抗も働き、止まっているときとは力の関係が違う。ある高さに落ち着くには、浮力と全体の重さなどがつり合う必要があるよ。気体が膨らめる袋の大きさには限りがあり、温度も変わる。そのため、飛べる高さや時間は、袋の設計、気体の量、装置の重さ、周りの条件によって決まるんだ。ひとつの簡単な絵で、全ての飛行条件を表せるわけではないよ。

気体を逃がす型と、閉じ込める型

NASAの説明では、科学気球にはゼロプレッシャー型とスーパープレッシャー型があるよ。ゼロプレッシャー型は気体の逃げ道を持ち、膨らんだ気体が抜けることで、袋の中の圧力が上がりすぎないようにする。名前にゼロが付いていても、袋の中に気体がないという意味ではない。周りとの圧力差を小さくする設計なんだ。気体を失うことは、飛行時間にも関わってくるよ。

スーパープレッシャー型は密閉され、中を周りより少し高い圧力に保てるように作る。どちらも薄いプラスチックの膜を使うけれど、圧力への対応が違うんだね。観測が終わると、専門のチームが計画した場所で装置を切り離し、パラシュートなどを使って回収する。飛ばす技術には、浮く仕組みだけでなく、装置を守り、地上へ戻す仕組みも含まれているんだ。

どっとと考えよう:荷物が増えたら?

紙に気球を描き、上向きに「浮力120ニュートン」、下向きに「全体の重力90ニュートン」と書こう。さっきの仮の例だね。次に、荷物だけを増やし、下向きの数字を130に変えてみる。周りの空気と気球の体積を変えないなら、上向きの数字まで勝手に増えることはない。どちらへ力が残るかを考えると、気体の名前だけでは飛べるか決まらないことが分かるよ。

では、同じ荷物をもっと高い空へ運ぶ計画なら、何を調べたいかな。その高さの空気の密度、温度、気体が占める体積などが必要になるね。ここでは実物を飛ばさず、紙の上の設計者になって考えてみよう。空へ浮かぶ科学気球は、重力をなくした道具ではない。周りの空気が押す力を利用し、袋も気体も装置も含めた重さとのつり合いを、丁寧に作る道具なんだ。

ことばのメモ

浮力
周りの液体や気体から受ける、全体として上向きの力。
密度
一定の体積あたりの質量。比べるときは温度や圧力などの条件も大切だよ。
アルキメデスの原理
物体が受ける浮力は、押しのけた液体や気体の重さに等しいという関係。
ニュートン
力の大きさを表す単位。質量の単位であるキログラムとは違うよ。
成層圏
対流圏の上にある大気の層。科学気球が観測を行う場所の一つ。
気圧
空気が物の表面を押す圧力。静かな大気では、高くなると小さくなる。

もとになった資料・もっと知りたい人へ

下記の資料をもとに、説明と考える問題を独自に構成しています。外部資料には英語のページもあります。どっとの画像は案内用のイラストで、観測写真や科学的な図ではありません。

分かりやすくするために、説明を短くしたり、たとえ話を使ったりしています。まちがいを見つけたらお問い合わせへお寄せください。制作方法は編集方針、いっしょに読むときのヒントは保護者・先生へで紹介しています。