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ヤモリは、どうしてつるつるの壁を歩けるの?:内容をイメージした挿絵
生きもの

ヤモリは、どうしてつるつるの壁を歩けるの?

爪が引っかかりそうにないガラスでも、すいすい歩くヤモリ。足に吸盤やのりがあるのかな? 指の裏から小さな毛の先へ、くっつく仕組みをたどろう。

まず、ひとことで

壁を登るヤモリの指には、先が細かく枝分かれした毛があるよ。その先が壁にとても近づくと、分子どうしの引き合う力が働くんだ。たくさんの接触で体を支え、毛の向きや力のかけ方を変えて足を外しているよ。

つるつるの場所では、何につかまるの?

木の皮のようにでこぼこした場所なら、爪を引っかけて登れそうだね。でも、ガラスのようにつるつるした面を歩くヤモリもいる。目立つ穴や出っ張りが見えない場所で、どうやって体を支えているのかな。足の裏に、目には見えない大きな吸盤が隠れている、という説明ではないんだ。指の裏にある、ごく小さな構造が鍵になるよ。

ここで考えるのは、トッケイヤモリなど、物に付着するための広い部分を指に持つヤモリだよ。その部分を足のパッドと呼ぶことがある。同じヤモリの仲間でも、ヒョウモントカゲモドキにはこのようなパッドがなく、滑らかな面を同じようには登れない。名前の仲間分けと、体の仕組みの違いを、分けて考えておこう。

指の裏から、細い毛の先へ

指の裏のパッドを拡大すると、細かな毛のような構造がたくさん並んでいるよ。これを剛毛といい、読み方は「ごうもう」。英語ではセタと呼ぶんだ。毛といっても、哺乳類の体に生える毛と全く同じものではなく、皮膚からできた細い構造だよ。主にケラチンというたんぱく質でできていて、先がさらに細かく枝分かれしている。

枝分かれした先には、へらのような小さな部分がある。こちらはスパチュラと呼ぶよ。2002年の研究を紹介した大学の解説では、その幅の例を約200ナノメートルとしている。1ナノメートルは1メートルの10億分の1だから、普通の目で一枚ずつ見ることはできないね。最初の図は、指、毛、毛の先という、拡大して見る順番を表しているよ。

足のパッド、一本の剛毛、枝分かれした先のへら状のスパチュラへ、順に拡大して見る関係を示す。
指の裏から、小さな毛の先へ

拡大して見る順番を表す模式図。各枠の縮尺は違い、毛の本数・枝の数・指の形は単純化しているよ。へら状の先端は吸盤ではない。

出典資料に基づきEggplanetが作成した模式図

とても近いところで、引き合う力が働く

毛の先と壁の表面がごく近くなると、物を作る分子どうしの間に、引き合う力が働くよ。ヤモリの付着では、ファンデルワールス力と呼ばれる力が重要なんだ。離れた場所からヤモリを壁へ引き寄せる、強い磁石のような働きではない。近い距離で働く小さな引力を、たくさんの接触で使う仕組みだよ。

大きな板を壁へ当てても、見た目の広さ全部が、分子の大きさでぴったり近づくとは限らない。細かく分かれた毛の先なら、表面に沿って近づける場所を増やせるんだ。大事なのは、ただ毛の本数が多いことだけではないよ。細い構造が分かれていること、先が実際に表面へ近づくこと、みんなで力を分け持つことが、つながっている。

のりや吸盤と、どう見分けたの?

2002年の研究では、研究者たちは、表面が水になじみやすいかどうかの異なる材料で、ヤモリの指や一本の毛が付着する力を比べたよ。ごく薄い水の膜による力が主役なのか、分子どうしの引力で説明できるのか、二つの考えを区別するためなんだ。選んだ材料では、水をはじく表面でも、しっかり付着する結果が得られた。

この結果は、ファンデルワールス力による説明を支えたよ。ただ壁を歩く映像を見るだけでなく、説明ごとに違う予想が出る条件を選んだことが大切なんだ。「乾いた接着」と呼ばれるけれど、水分や表面の状態が何も影響しないという意味ではない。また、空気を閉じ込めて圧力の差を作る吸盤とも、べたべたののりを塗る方法とも、仕組みが違うよ。

くっつくのに、どうして一歩を出せるの?

もし足がいつでも強くくっついたままなら、次の一歩が出せなくなってしまうね。ヤモリの毛は、向きによって働き方が違う。指を表面に沿って体の側へ少し引く動きで、毛の先が接触し、付着を保ちやすくなるんだ。外すときは、その力を緩めたり、毛の角度を変えたりする。勝手に何にでも付くのではなく、動きと組み合わせて使っているよ。

歩くときには指を反らす動きも見えるけれど、「テープを端からはがすのと全く同じ」と考えるだけでは足りない。2006年の研究は、毛の集まりや指に沿う力と、表面から離れる向きの力を調べ、付着の向きによる違いを説明したよ。二つ目の図は、接触を保つ状態と外す状態の違いを、一本の毛の模型で示しているんだ。

表面に近い毛の先が接触する状態と、毛の角度を変えて先が離れる状態を比べる。動きと接触の変化を一本の毛で単純化する。
接触を保つ状態と、外す状態

一本の毛で接触の違いを考える模式図。矢印は動きの例で、力の大きさや本物の角度の測定値ではないよ。実際には多数の毛、指、足が一緒に働く。

出典資料に基づきEggplanetが作成した模式図

分かったことと、まだ調べること

足の仕組みが分かると、形をまねた道具を作れるかもしれない。2002年の研究では、毛の先をまねた小さな人工の構造も作り、付着する力が調べられたよ。でも、一つの先端が付くことと、大きな面でたくさんの先端を同時に働かせることは、別の課題だね。壁を歩く体には、接触をそろえる構造や、足を動かす制御も必要なんだ。

研究はそこで終わっていないよ。米国のNISTが公開している2022年の論文要旨では、毛の先の表面に、とても薄い脂質の層があることも調べている。脂質は油の仲間を含む物質だよ。だから「乾いた接着だから、表面には何もない」とは言えないね。細かな形、材料の性質、表面の状態を合わせて考えることが、より詳しい理解につながるんだ。

人の手に毛を足せば、壁を登れる?

ヤモリの力を知ると、毛の付いた手袋を作れば、自分も壁を歩けそうに思うかもしれないね。でも、体が大きくなると支える重さも違う。毛の先を増やすだけで、全ての先が同時に接触し、力を均等に分け持てるとは限らない。付けること、支えること、外すことを一緒に設計する必要があるんだ。動物の仕組みを道具へ移すときには、使う条件の違いも調べるよ。

ここでの図は、拡大する順番と、接触の変化を理解するための模型だよ。描いた毛の数や太さから、本物が支えられる重さを計算することはできない。実際の付着には、表面のでこぼこや汚れ、材料なども関わる。「この仕組みなら、どんな壁でも必ず登れる」という約束でもないんだ。形を見つけることと、働く条件を確かめることは、両方とも大切だね。

どっとと考えよう:付く条件と、外れる条件

紙に、指のパッド、一本の毛、枝分かれした先の三つを描いてみよう。次に、毛の先が壁から離れている場合と、近づいている場合を描き分ける。どちらが、分子どうしの引力を使いやすいかな。「ヤモリだから付く」という説明から、「どこが、どんな状態になると付く」という説明へ進めると、仕組みを自分の言葉で話せるよ。

さらに、足を外せないヤモリを想像してみよう。体を支える力があっても、歩くには何が足りないかな。付ける条件と外す条件を、紙の上で二列に書いてみるといいね。動物を捕まえて足を引っ張ったり、自分で壁を登ったりする実験はしないよ。図や映像で確かめながら、小さな接触と大きな動きが、どう結び付くかを考えてみよう。

ことばのメモ

足のパッド
指の裏にある、付着に関わる広がった部分。ここでは細かな毛が並ぶ部分を指す。
剛毛(セタ)
ヤモリの指の裏に並ぶ細い構造。先がさらに枝分かれしている。
スパチュラ
剛毛が枝分かれした先にある、ごく小さなへら状の部分。
ファンデルワールス力
ごく近い原子や分子どうしの間に働く力の仲間。ここでは毛の先と壁の引き合いに注目する。
ケラチン
皮膚からできる構造などを作るたんぱく質の仲間。ヤモリの剛毛の主な材料。

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