本文へ移動
目次へ
クマムシは、乾いたときどうやって待つの?:内容をイメージした挿絵
生きもの

クマムシは、乾いたときどうやって待つの?

コケのそばの小さな動物、クマムシ。水が減ると脚を引き込み、体を縮めるものがいるよ。活動する姿と乾燥に耐える姿を比べ、強さの条件を考えよう。

まず、ひとことで

乾燥に耐えられるクマムシは、体を縮めたトンになり、代謝を極端に低くして厳しい時期を越えることがあるよ。水が戻ると、生き延びた個体は活動を再開できる。ただし、種類や乾き方などの条件で結果は違うんだ。

コケのそばにいる、小さな動物

コケの葉を、ぐっと大きくして見るとしよう。葉の間の水の中には、八本の脚を持つ小さな動物がいることがある。クマムシだよ。クマに似た歩き方から名前が付いているけれど、クマの子どもでも、昆虫でもないんだ。種類によって姿は違い、多くは一ミリメートルより小さい。肉眼では見分けにくい世界に、歩き、食べ、子を残す暮らしがあるんだね。

クマムシは、乾燥などに耐える生きものとして有名だよ。でも、何が起きても平気というわけではない。活動しているときと、厳しい条件に備えて活動を大きく落としたときでは、体の状態が違うんだ。今回は、陸のコケなどで暮らす種類のうち、乾燥に耐えられるものに注目しよう。乾いた場所でも、いつも元気に歩き回っている、という話とは区別して考えるよ。

陸にいても、活動には水がいる

陸のクマムシが活動するには、体の周りに薄い水の膜が必要だよ。コケや地衣類の間にたまる水、土の中の湿ったすき間などが、その小さな暮らしの場になる。大きな池でなくても、クマムシにとっては体を包む水のある世界なんだ。最初の図では、コケのそばの水の膜と、そこにいるクマムシを拡大して示した。コケの上を乾いたまま歩く動物として描いてはいないよ。

クマムシの食べものは種類によって違う。藻類などを食べるものもいれば、小さな動物を食べるものもいるよ。脚の先にある爪などで足場をつかみ、口の仕組みを使って食べる。脚は左右に四対、合計八本ある。ただし、小さいから微生物のすべてと同じ仲間、というわけではないよ。クマムシは、多くの細胞でできた動物なんだ。水の膜は、その動物が活動する場所を用意しているんだね。

コケの近くの薄い水の膜を拡大し、四対八本の脚を持つクマムシがその水の中で活動することを示す。
活動する場所は、薄い水の中

陸の湿った場所を単純化した拡大模式図。クマムシと水の膜を見やすく大きく描き、実際の大きさの比率・爪や体内の細部は省略している。特定の種類の標本画像ではないよ。

出典資料に基づきEggplanetが作成した模式図

水が少なくなると、体を縮める

周りが乾いてくると、乾燥に耐えられるクマムシは、脚などを引き込み、体を小さく縮めた状態になることがある。この形を、樽を意味する言葉から「トン」と呼ぶよ。外へ伸ばしていた脚が見えにくくなり、活動していた姿とは違って見えるんだ。でも、別の種類の動物へ変身したわけではない。同じ個体が、環境の変化に伴って体の状態を変えているんだね。

このとき体の水分は大きく減り、体の中で物質を使ったり作ったりする働き、つまり代謝も極端に低くなる。こうした厳しい条件に応じて代謝をほぼ停止する状態は、乾眠などを含むクリプトビオシスと呼ばれるよ。乾いた状態で生き残ることと、そこで食べたり成長したりできることは別なんだ。二つ目の図では、活動する姿、乾いたトン、水が戻った後の変化を順に並べたよ。

水が戻ると、活動を再開できることがある

トンの状態を生き延びた個体に水が戻ると、体が水を取り込み、脚を伸ばして再び動き始めることがあるよ。外から動きが見えなかった時間にも、命が失われていたとは限らないんだ。ただし、死んだ個体が水で生き返る、という説明は違う。体が保たれたまま厳しい時期を越え、活動できる条件へ戻った場合に、再開できると考えるんだね。

水を加えたら全ての個体が同じ時間で動き始める、とも限らない。種類や、乾いていた時間、乾燥前後の条件によって結果は変わるよ。「待つ」という言葉は分かりやすいたとえだけれど、クマムシが予定を考えて、水が来る時刻を知っているという意味ではない。体の働きが変わることで、活動できない時期をしのぐ。その仕組みとして読んでみよう。

水があるときの活動状態、乾燥に応じて脚を引き込み代謝を大きく落とすトン、水が戻り生存した個体が活動を再開する場合を順に示す。
活動する姿と、乾いたトン

乾燥に耐えられる種類についての模式図。時間や体内水分の実測グラフではない。種類や乾き方などの条件で結果は変わり、水を加えれば全個体が回復するという意味ではないよ。

出典資料に基づきEggplanetが作成した模式図

丸まるだけで、乾燥に耐えられるの?

小さく丸まる形だけを作れば、どんな動物でも乾燥に耐えられるわけではないよ。水が失われると、細胞の中の大切な分子にも影響がある。クマムシでは、体の形の変化に加え、細胞の中身を守る仕組みが研究されているんだ。体の見た目を観察することと、内部で働く分子を調べることは、違う大きさから同じ問いへ近づく方法になるよ。

2017年の査読論文では、トーマス・ブースビーたちが、クマムシに特徴的なタンパク質の一群を調べた。いくつかの遺伝子の働きを抑えると、調べたクマムシが乾燥に耐えにくくなる結果などを報告している。これは、タンパク質が乾燥への強さに関わる根拠の一つだよ。この説明では、公開論文の要旨・導入と該当する実験結果を参照した。全ての種類や条件が、その一つの研究で説明できたわけではないんだ。

乾く速さも、種類も大事

同じ「乾かした」という言葉でも、ゆっくり水が減る場合と、急に乾く場合は違う。2017年の研究では、ゆっくり乾かす準備をした個体と、そうでない個体を比べる実験も行われたよ。乾燥に備える時間が結果に関わるんだ。だから、乾燥に強いという特徴を聞いても、水分の減り方や、実験した種類を確かめる必要がある。形がトンになったかだけでは、結果を全部判断できないんだね。

クマムシにはさまざまな種類があり、海や淡水で暮らすものもいる。乾燥への耐え方や、細胞を守る仕組みも、すべてが同じとは限らないよ。ある種類で、ある時間なら耐えられたという記録を、仲間全体がいつまでも耐えられるという意味に広げないようにしよう。強さの記録は、種類、状態、条件、時間を一緒に読むと、その本当の意味が見えてくるんだ。

「何にでも強い」より、暮らし方を見よう

クマムシの写真と、極端な環境の話を並べると、宇宙でもふつうに暮らせる生きものに思えるかもしれないね。でも、一時的な条件を生き延びることと、その場所で食べ、成長し、世代を重ねることは違う。活動するための水などの条件は必要なんだ。今回は、温度や放射線への強さを比べる競争ではなく、乾燥と活動の切り替わりを考えているよ。

この切り替わりを知ると、雨が降った後のコケや、乾いて見える小さなすき間にも、別の見方ができる。見た目が乾いているから、そこには生きものが全くいない、とは決められないんだ。一方、どの場所にも必ずクマムシがいると決めつけることもできない。どんな場所を、どんな方法で、いつ調べたかが大事だよ。小さな生きものの暮らしを知るには、記録の条件も見よう。

どっとと考えよう:動かないのは、なぜ?

紙に「水がある活動時」「乾いたトン」「水が戻った後」の三つの欄を描こう。それぞれに、体の形、周りの水、活動の様子を書き分けてみてね。最後の欄には「必ず全員が戻る」と書かず、「生き延びた個体が、条件に応じて活動を再開」と添えよう。生存することと、活動が見えることを分けるだけで、観察から言えることが、ずっと正確になるんだ。

では、顕微鏡の写真で動いていない一匹を見たら、トンだと決められるかな。一枚の写真だけでは、動いていた途中の一瞬かもしれないし、別の状態かもしれない。時間をおいた記録や、周りの水の状態も確かめたいね。ここでは生きものを乾かす実験はせず、紙と公開されている写真で考えてみよう。小さな姿をよく見ることと、結論を急がないことが、クマムシの不思議に近づく入り口になるよ。

ことばのメモ

水の膜
体を包むように広がった薄い水の層。陸のクマムシが活動する場所になるよ。
トン
クマムシが脚などを引き込み、体を縮めた形。乾燥に備えるときなどに見られる。
代謝
体の中で物質を使ったり作ったりする、生きるための反応のまとまり。
乾眠
乾燥に応じ、体の水分と代謝を大きく減らして耐える状態。
クリプトビオシス
乾燥などの厳しい条件で、代謝をほぼ停止する状態。乾眠もその一つだよ。
タンパク質
体の構造や反応など、さまざまな仕事に関わる分子。細胞を守る働きに関わるものもある。

もとになった資料・もっと知りたい人へ

下記の資料をもとに、説明と考える問題を独自に構成しています。外部資料には英語のページもあります。どっとの画像は案内用のイラストで、観測写真や科学的な図ではありません。

分かりやすくするために、説明を短くしたり、たとえ話を使ったりしています。まちがいを見つけたらお問い合わせへお寄せください。制作方法は編集方針、いっしょに読むときのヒントは保護者・先生へで紹介しています。