
ジェーン・グドールは、枝一本から何を発見したの?
チンパンジーが細い枝を穴に差し込んでいる。遊びかな、食事かな? 動作を順番に見た研究者は、人間についての思い込みにも気づいたんだ。

まず、ひとことで
グドールは、野生のチンパンジーが道具を使い、使いやすく変える行動を記録して、人間だけの能力という考えに問いを投げかけたよ。
森の中で、何を見ようとしたの?
ジェーン・グドールは、野生のチンパンジーの暮らしを長く調べた研究者だよ。1960年、現在のタンザニアにあるゴンベで観察を始めたんだ。誰と過ごし、何を食べ、どんな動きをするか。実験室の中だけでは分からない毎日の姿を追ったんだね。
生きものを観察するとき、「たぶんこうだろう」という予想は役に立つよ。でも、予想に合う場面だけ選んで見ていたら、意外な行動を見落とすかもしれない。グドールの仕事から学べるのは、見えた動作を細かく残し、考えを確かめる姿勢なんだ。
今回の主役は、立派な機械ではなく、草の茎や細い枝だよ。身近な物でも、誰が、どんな順番で、何に使ったかを見れば大切な手がかりになる。一本の枝を持っている写真だけでは分からないことが、その前後の動作から見えてくるんだ。
枝を差し込んで、引き抜くと
グドールは1960年、デイビッド・グレイビアードと呼んだチンパンジーなどが、シロアリを捕る様子を観察したよ。細い植物の材料を巣の穴に入れ、虫が付いたものを引き抜き、口で取って食べるんだ。指だけでは届かない場所の食べ物を得ていたんだね。
大事なのは、「枝を持った」で記録を終えないこと。穴へ入れる、引き抜く、付いた虫を口へ運ぶ、という前後の流れをつなげると、その物が食べ物を取るために使われたと分かるよ。物の名前だけでなく、使われた場面が意味を教えてくれるんだ。
研究所が紹介する当時の記録にも、手に持った材料と、そこに付いた虫を口で取る動作が残っているよ。下の図は、その仕組みを整理した模式図だよ。特定の日の写真を写したものではなく、巣や道具の大きさも説明のために変えているんだ。
チンパンジーの道具使用を整理した模式図。特定の一回の観察を再現した写真ではないよ。植物の材料や動作には違いがあり、虫と道具の大きさも実際の縮尺ではないんだ。
出典資料に基づきEggplanetが作成した模式図使うことと、使いやすくすること
さらに、チンパンジーは枝の葉を取り除くなど、使う材料に手を加えることもあったよ。落ちている物をそのまま利用するだけでなく、穴へ差し込みやすい形に変えるんだ。このような行動は、道具を「使う」ことに加え、「作る」ことを考える手がかりになったよ。
ここでいう道具は、工場で作った金属の機械に限らないんだ。体とは別の物を使って、相手や材料に働きかけるという見方ができるよ。人が名前を付けて売っているかどうかではなく、実際にどう利用したかに目を向けているんだね。
たとえば、同じ紙でも、机に置けばただの紙に見える。でも丸めて細い筒にすれば、別の働きを持たせられるね。これは考え方のたとえで、紙を丸める作業とチンパンジーの頭の中が同じだと証明するものではない。結果と心の仕組みは分けて考えよう。
一つの観察が、考え方を揺さぶる
当時は、道具を作る能力が人間をほかの動物から分ける大事な特徴だという考えがあったよ。だから、野生のチンパンジーが材料を変えて使う記録には大きな意味があったんだ。「人間だけができる」と決めた説明を、見直す必要が生まれたんだね。
ただし、「道具を使う点が似ている」からといって、人間とチンパンジーがすべて同じになるわけではないよ。できることの種類や、覚え方など、比べる問いはたくさんある。一つの共通点を見つけたら、全部同じとまとめず、次の違いも調べていくんだ。
観察から言える範囲にも注意しよう。枝を使って虫を取った場面は記録できる。でも、その一場面だけで「これから何を考えるか」や「同じ種類の全員が同じことをするか」までは決められない。分かったことが増えるほど、新しい問いも増えていくんだね。
動作の記録と、そこから考える説明、さらに確かめたい問いを分けた例。気持ちやすべての個体の行動まで、一場面だけで決めないようにしよう。
出典資料に基づきEggplanetが作成した模式図見て覚えたのか、どう確かめる?
小さなチンパンジーが大人のそばにいれば、道具の使い方を見る機会があるよ。グドールは早い時期から、行動が観察やまねを通して次の世代へ伝わる可能性にも注目したんだ。生まれつきの性質だけでなく、育つ間の経験も考える視点だね。
でも、大人と子どもが似た動作をしただけで、必ずその大人を見て覚えたと決まるわけではない。似た材料を触って、自分で試した可能性も考えられるよ。誰の近くにいて、何を見て、その後どう行動が変わったかを続けて記録すると、問いを深められるんだ。
地域によって使われる道具や行動に違いがあるなら、周りの材料の違いも比べたいね。枝が手に入るか、食べ物は同じか、仲間と過ごす機会はどうか。一つの理由に飛び付かず、暮らしの条件もそろえて考えることが、学び方を調べる助けになるんだ。
長い研究を支えた、たくさんの人
ゴンベの研究は、グドール一人がずっとすべてを記録したわけではないよ。タンザニアの現地スタッフや、さまざまな研究者が観察をつないできたんだ。短い訪問だけでは分からない、成長や家族の関係を知るには、長く記録を続ける力が必要だったんだね。
一日の写真を一枚見ても、その子がどう育ってきたかは分からないよね。日付や個体が分かる記録を積み重ねると、前の行動と後の変化を比べられる。誰の記録なのかを区別することも、長い研究を支える大切な仕事なんだ。
観察者がそこにいることや、食べ物を与えることが、動物の行動に影響する場合も考えなければならないよ。グドール自身の回想には、当初の餌場と研究の広がりも書かれている。観察の方法も見直しながら、何を見ているのかを確かめるのが科学なんだね。
どっとと考えよう:見たことと、考えたこと
身近な鳥を離れた場所から見る場面を想像しよう。「枝をくわえて飛んだ」は動作の記録になるね。「巣を作るのが楽しそう」は気持ちについての解釈だよ。どちらも同じように書くと、目で確かめたことと想像したことが混ざってしまうんだ。
ノートを二つに分けて、左に見た動作、右に考えた説明を書いてみよう。「巣の材料かな?」と疑問符を付けてもよいよ。次にどこへ運ぶかが見えれば、新しい手がかりが増える。答えを急がず、次に確かめたいことを書くのも立派な観察なんだ。
鳥に近づいたり、餌を置いて行動を変えたりする必要はないよ。今いる場所から見える範囲を短く記録するだけで始められる。「何を持った?」から「何のために使った?」へ。グドールが向き合ったように、小さな動作から大きな問いを育ててみよう。

ことばのメモ
- 観察
- 対象の様子や変化をよく見て、記録すること。
- 道具使用
- 体とは別の物を使って、食べ物などの対象に働きかけること。
- 個体
- 同じ種類の仲間のうち、一匹、一羽、一人など、一つの生きもの。
- 解釈
- 見たことや得られた情報について、意味や理由を考えること。
もとになった資料・もっと知りたい人へ
下記の資料をもとに、説明と考える問題を独自に構成しています。外部資料には英語のページもあります。どっとの画像は案内用のイラストで、観測写真や科学的な図ではありません。
- ジェーン・グドール研究所:How Jane Changed Science Forever
- ジェーン・グドール研究所:道具使用とチンパンジーの行動
- ジェーン・グドール研究所:55 Years at Gombe(本人へのQ&A)
- ジェーン・グドール研究所:研究の始まりと道具作り(本人へのQ&A)
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